ふと目を離したすきに、リビングの壁にクレヨンでぐるぐる、ぐるぐる。ふすまや白い壁紙に、大きな線や丸が堂々と描かれているのを見つけて、思わず「あっ!」と声が出てしまった経験はありませんか。
片付けや掃除のことを考えると、つい強い口調になってしまうのも無理はありません。けれど、壁への落書きは、多くの家庭で一度は通る道ともいえる出来事です。子どもにとっては「大きな場所に思いきり描きたい」という気持ちの表れであることも少なくありません。
今回は、壁に落書きされたときの落ち着いた対処のしかたや、描きたい気持ちを受け止めながら「ここに描こうね」を伝える工夫、そして思わず残したくなった落書きの思い出の残し方をご紹介します。
まずはひと呼吸。落書きの裏にある「描きたい」気持ち
壁に描かれた落書きを見ると、どうしても汚れのほうに目が行ってしまいますよね。でも、少しだけ子どもの目線に立ってみると、違った見え方もしてきます。
・大きく描けるのが楽しい:画用紙よりずっと広い壁は、腕を大きく動かせる魅力的な場所です。立ったまま全身で描ける気持ちよさもあるのかもしれません
・「描いていい場所」がまだわからない:小さいうちは、紙と壁の違いをはっきり区別していないこともあります。いたずらのつもりではなく、ただ描きたかっただけということも多いものです
・見てほしい気持ち:目につく場所に描くことで、「見て見て」と伝えたいこともあるかもしれません
もちろん、だからといって何でも許す必要はありません。ただ、最初のひと言を「なんで描いたの!」ではなく「いっぱい描いたね。でも、壁は描く場所じゃないんだよ」にするだけで、子どもも受け止めやすくなります。描いたこと自体を責めるのではなく、「場所」についてやさしく伝えるのがポイントです。
落ち着いて対処するための、お掃除の基本
気持ちを切り替えたら、次は現実的なお掃除です。落書きの消し方は、描いた画材と壁の素材によって向き不向きがあります。
・早めに対応する:時間がたつほど汚れがなじんで落ちにくくなることがあります。見つけたら、なるべく早めに手をつけるのがおすすめです
・画材と壁の素材を確認する:クレヨン、水性ペン、油性ペンなど何で描いたか、壁紙なのか、ふすまなのか、木の扉なのかによって合う方法が変わります。賃貸住宅の場合は、原状回復のことも考えて慎重に
・必ず目立たない場所で試す:市販の落書き用クリーナーやスポンジなどを使う場合は、いきなり広い範囲に使わず、端の目立たない部分で試してから。こすりすぎると壁紙の表面が傷んだり、色が抜けたりすることもあります
・子どもと一緒に片付けるのもひとつの方法:年齢によっては、「一緒にきれいにしようか」と少しだけ手伝ってもらうのも、「壁に描くと大変なんだな」と知るきっかけになります。罰としてではなく、共同作業として取り組むのがコツです
どうしても落ちない場合は、無理をせず、壁紙用の補修シールやポスターなどで目立たなくするという選択肢もあります。完璧に元どおりにしようと思いつめなくても大丈夫です。
「ここなら描いていいよ」の場所をつくる
壁に描きたくなる気持ちが強い時期は、描いていい場所を用意してあげると、落ち着くことがあります。「だめ」と言うだけでなく、「こっちならいいよ」とセットで伝えるイメージです。
・壁に大きな紙を貼る:模造紙やロール紙を壁にマスキングテープで貼っておけば、立ったまま大きく描く楽しさをそのまま味わえます。描き終わったら、はがして新しい紙に交換するだけです
・お絵かきボードやホワイトボードを置く:何度でも描いて消せるボードは、「描きたいときにすぐ描ける場所」として重宝します
・画材の置き場所を決める:クレヨンやペンを「お絵かきコーナー」にまとめておくと、描く場所と道具が結びつきやすくなります。小さいうちは、使うときだけ出すようにするのも一つの方法です
・描いたものを飾る:紙に描いた絵を「すてきだね」と壁に飾ってあげると、「紙に描くと飾ってもらえる」という楽しい経験につながります
すぐに壁への落書きがなくなるとは限りませんが、何度か繰り返すうちに、少しずつ「描く場所」が伝わっていくはずです。焦らず、気長に付き合っていきましょう。
消す前に一枚。落書きも成長の記録になる
大変だった壁の落書きも、何年かたつと「そういえばこんなこともあったね」と笑い話になるものです。消す前に、さっと写真を一枚撮っておくのもおすすめです。
・落書きと子どもを一緒に撮る:落書きの前に立つ子どもを撮っておくと、そのころの背の高さや表情まで残せます。手が届く高さに描かれた線から、その時期の小ささを実感することもあるかもしれません
・日付とひと言メモを添える:「2歳半、初めての壁画」「本人いわく、これはママ」など、短いメモがあるだけで、あとから見返したときの楽しさがぐんと増します
・壁に貼った紙の作品も記録する:大きな紙に描いた作品は保管場所に困りがちです。写真に撮ってから、気に入ったものだけを残すようにすると、無理なく続けられます
わたしたちが作っている「コノミュー」は、子どもの作品を写真で残して、家族で見返せるアプリです。作品にメモを添えたり、お気に入りの一枚をキャラクターや絵本のようにまとめたりすることもできます。消してしまう落書きや大きな紙の作品を残しておく場所のひとつとして、気軽に使っていただけたらうれしいです。
「描きたい」気持ちは、そのままに
壁の落書きを見つけた瞬間は、誰だってため息が出るものです。思わず強く叱ってしまった日があっても、自分を責めすぎなくて大丈夫。次に「ここなら描いていいよ」と伝えられれば、それで十分です。
子どもが「描きたい」と思う気持ちは、とても大切なもの。場所のルールは少しずつ覚えていけばいいので、その気持ちだけはしぼませないように、大きな紙やボードを用意して、思いきり描ける時間を一緒に楽しんでみてください。いつか、あの壁のぐるぐる線も、家族の大切な思い出話のひとつになるはずです。
