「これ、なに描いたの?」と聞いたとき、子どもが返してくれる答え。あの言葉こそ、実は作品そのものと同じくらい残しておきたい宝物かもしれません。
絵は残っても、言葉は消えていく
子どもの絵は、大人の目にはよくわからないことがよくあります。ぐるぐるの渦、正体不明の生きもの、緑色をした人の顔。けれど本人に聞いてみると、そこには驚くほどはっきりした物語があります。「これはママが寝てるとこ」「怪獣が公園でごはん食べてるの」。
この説明を聞いた瞬間、それまでただの落書きに見えていた紙が、急に愛おしいものに変わります。ところが数年経つと、絵は手元に残っているのに、あのとき何と言っていたかはきれいに思い出せなくなっている。多くの親が、あとになって「聞いておけばよかった」と感じる部分です。
ひとこと聞いて、ひとこと書く
特別な準備はいりません。子どもが作品を持ってきたら、まず「これ、なに?」ではなく「これ、どんなお話?」と聞いてみてください。「なに」だと正解を求められているように感じる子もいますが、「どんなお話」なら自由に語れます。
返ってきた言葉は、そのまま書き留めます。作品の裏に鉛筆で書いてもいいですし、写真を撮ったあとにメモとして添えてもかまいません。大切なのは、要約せずに子どもの言い回しのまま残すこと。「おっきいのがパパで、ちっちゃいのがぼく」という言葉は、「家族の絵」と書き直した瞬間に、その子らしさが抜け落ちてしまいます。
日付と、そのときの様子も少しだけ
余裕があれば、年月日と、描いていたときの状況をひとこと添えておきましょう。「運動会の次の日」「風邪で保育園を休んだ日の午後」。作品の内容とは直接関係なくても、この一行があるだけで、後から見返したときに当時の空気ごとよみがえります。
年齢だけでも十分です。3歳と4歳では線の勢いも色の選び方もまるで違うので、あとから並べたときに成長がはっきり見えるようになります。
聞くこと自体が、子どもへの贈り物になる
この習慣には、記録以外の効果もあります。自分の作品について大人が真剣に耳を傾けてくれる時間は、子どもにとって「自分の考えたことには価値がある」と感じられる時間です。上手・下手を評価されるのではなく、話したことをそのまま受け取ってもらえる。その積み重ねが、次に何かを作ってみようという気持ちにつながっていきます。
親のほうも、聞くことで発見があります。園での出来事、いま気になっているもの、こわいと思っているもの。作品の説明は、子どもが日常会話ではなかなか話さないことをこぼしてくれる入口にもなります。
作品と言葉を、一緒に残す
とはいえ、紙のメモは作品とはぐれてしまいがちです。せっかく書き留めても、数年後にどの絵の話だったのか分からなくなってしまっては、もったいない。
こども作品ミュージアム「コノミュー」では、作品を撮影して残すときに、そのときのエピソードやひとことも一緒に記録できます。作品と言葉がひとつの組で保存されるので、あとから見返したときに、絵と一緒にあの日の声も思い出せます。撮った作品はキャラクターや絵本にもでき、家族だけの小さな美術館として育てていけます。
今日、子どもが何か持ってきたら、まずひとこと聞いてみてください。その答えを書き留めておくだけで、数年後の一枚の価値はぐっと変わります。
