園の廊下にずらりと並んだ子どもたちの絵。作品展や参観日にそれを眺めていて、「あの子はこんなに上手に描けるんだ」「うちの子のは、なんだかぐちゃぐちゃ…」と、思わず胸がざわっとした経験はありませんか。
わが子の絵が大好きなはずなのに、隣に並ぶとつい比べてしまう。そして比べてしまった自分に、ちょっと落ち込んでしまう。そんな気持ちは、子どもを大切に思っているからこそ生まれるものなのかもしれません。
今回は、ほかの子の絵と比べてしまうときの気持ちとの付き合い方と、わが子の作品を「その子のものさし」で楽しむためのヒントをご紹介します。どれかひとつでも、気持ちが少し軽くなるきっかけになればうれしいです。
比べてしまうのは、自然なこと
まず伝えたいのは、比べてしまう自分を責めなくて大丈夫、ということです。たくさんの作品が同じ場所に並んでいれば、違いが目に入るのはごく自然なこと。大人の目は、どうしても「上手・下手」や「年齢らしさ」といったものさしで見てしまいがちです。
大切なのは、比べたことそのものより、その気持ちを子どもにどう向けるかです。「○○ちゃんはもっと丁寧に描いてたよ」といった言葉は、たとえ励ますつもりでも、子どもには「自分の絵はだめなんだ」と伝わってしまうことがあります。
心の中で比べてしまったときは、「あ、いま比べちゃったな」と気づくだけで十分です。そのうえで、目の前のわが子の絵に、もう一度ゆっくり目を向けてみましょう。
「その子のものさし」で絵を見てみる
子どもの絵には、大人の考える「上手さ」では測れない魅力がたくさん詰まっています。ほかの子と横に並べるのではなく、その子自身の絵として眺めてみると、見えてくるものが変わってきます。
・好きなものが描かれているか:電車、恐竜、お花、家族。何度も登場するモチーフには、その子の「好き」がそのまま表れています
・色の選び方を楽しむ:思いがけない色づかいも、その子なりの理由や気分があるのかもしれません
・勢いや線の元気さを見る:画用紙からはみ出しそうな線や、力強いぬり方は、描くことを楽しんだしるしです
・こだわりの場所を探す:小さく描き込まれた模様や、ていねいにぬった一部分に、その子の集中した時間が見えることがあります
「上手に描けているか」ではなく「何を楽しんで描いたのか」という視点に切り替えるだけで、同じ絵がぐっといとおしく見えてくるはずです。
比べるなら「少し前のその子」と
どうしても比べたくなったら、比べる相手を「ほかの子」から「少し前のわが子」に変えてみるのがおすすめです。半年前、1年前の絵と今の絵を並べてみると、線がしっかりしてきた、顔に表情が描かれるようになった、描くものの種類が増えた、など、その子なりの変化に気づけることがあります。
成長のスピードや表れ方は、子どもによってさまざまです。変化がはっきり見えない時期があっても、まったく問題ありません。「前はこうだったね」「今はこんなふうに描くんだね」と、変わったことも変わらないことも、そのまま受けとめてあげられたら十分です。
そのためにも、ときどき作品を残しておくことが役に立ちます。全部でなくても、月に1〜2枚、写真に撮って日付を添えておくだけで、あとから見返せる「その子だけの成長の記録」になります。
子どもへの声かけは「評価」より「興味」を
作品展のあとや、家で絵を見せてくれたとき、どんな言葉をかければいいか迷うこともありますよね。そんなときは、評価するよりも、絵への興味を伝える言葉を選んでみてください。
・「これは何をしているところ?」
・「この色、きれいだね。どうしてこの色にしたの?」
・「ここ、すごくていねいに描いてあるね」
・「描いているとき、楽しかった?」
子どもが話してくれたことは、絵と一緒に残しておくのもおすすめです。わたしたちが作っている「コノミュー」は、子どもの絵や工作を写真で残し、日付や子どもの言葉を一緒に記録できるアプリです。過去の作品とすぐに見比べられるので、「その子のものさし」で成長を振り返るときのお手伝いができたらうれしいです。
その子の絵は、その子にしか描けない
ほかの子の絵がまぶしく見える日も、きっとあると思います。でも、わが子の絵には、その子が見ている世界や、その日の気分、描きながら考えていたことが、ほかの誰にもまねできない形で詰まっています。
比べてしまった日は、家に帰ってから、わが子の絵をもう一度じっくり眺めてみてください。そして「この絵、好きだな」と思えたところを、ひとつだけ子どもに伝えてみましょう。その小さなひと言が、子どもにとって「描くっていいな」と思える大切な記憶になるかもしれません。