秋の夜が長くなってくると、夕ごはんのあとやお風呂上がりに、子どもがお絵かきを始める時間が増えるご家庭もあるかもしれません。描き終わった絵を「見て!」と差し出されて、「上手だね」と返したあと、なんとなく会話が終わってしまう……そんな経験はありませんか。
実は、子どもの絵には、まだ言葉になっていない「おはなし」がたくさん詰まっています。ほんの少し問いかけるだけで、1枚の絵から、親子だけの小さな物語が生まれることがあります。
今回は、子どもの絵をきっかけにした即興ストーリー遊びの楽しみ方と、生まれたお話を思い出として残すアイデアをご紹介します。特別な準備はいりません。今夜からでも試せる、ささやかな遊びです。
1枚の絵には、まだ語られていない物語がある
大人から見ると「丸と線がいくつか描いてあるだけ」に見える絵でも、描いた本人に聞いてみると、「これはね、おなかがすいたくまさん。いまからはちみつを探しに行くの」と、思いがけない答えが返ってくることがあります。
子どもは、描きながら頭の中でお話を進めていることも多いものです。ただ、それを自分から順序立てて説明するのは、まだ難しいこともあります。だからこそ、そばにいる大人がちょっとした「聞き役」になると、絵の中の世界がぐっと広がります。
このとき大切なのは、正解を探そうとしないことです。「これは犬?猫?」と答えを確かめるより、「この子はだれなの?」と子どもに名前をつけてもらうほうが、お話はずっと自由に転がっていきます。
お話がふくらむ、やさしい問いかけのコツ
即興ストーリー遊びといっても、親が上手にお話を作る必要はありません。子どもが話したくなるような「きっかけ」を、いくつか投げかけてみるだけで十分です。
・「この子はだれ?」と登場人物を聞く:名前や好きな食べもの、年齢などを聞いていくと、絵の中のキャラクターに少しずつ命が吹き込まれていきます
・「ここはどこ?」と場所を聞く:背景が描かれていなくても、「ここは森?それとも海の中?」と聞くと、子どもの頭の中の景色を教えてくれることがあります
・「このあと、どうなるの?」と続きを聞く:絵の「次の場面」を想像してもらう問いかけです。お話を前に進める、いちばん楽しい質問かもしれません
・「困ったことは起きる?」とひと山つくる:「雨が降ってきたらどうする?」など、小さなハプニングを提案すると、子どもなりの解決策が飛び出して、物語らしくなっていきます
話が途中で脱線したり、急に終わったりしても大丈夫です。「それでおしまい!」と言われたら、「いいお話だったね」と受け止めるだけで、子どもにとっては満足のいく時間になります。親が話を整えようとしすぎず、子どものペースに合わせるのが、長く楽しめるコツです。
まだ言葉が少ない年齢の子なら、親が「くまさん、どこに行くのかな?おさんぽかな?」と語りかけ、子どもがうなずいたり指をさしたりするだけでも、立派な親子のお話づくりです。
何枚かの絵を並べて「つなげる」遊び方
1枚の絵でお話を楽しめるようになったら、何枚かの絵を並べてみるのもおすすめです。別々の日に描いた絵でも、並べてみると不思議とひとつの物語に見えてくることがあります。
・3枚並べて「はじめ・まんなか・おわり」:最近描いた絵の中から3枚選び、順番を子どもに決めてもらいます。「最初はこの絵で、次にこうなって、最後はこれ!」と、自然に起承転結のようなものが生まれます
・キャラクター同士を出会わせる:別の絵に描かれた動物や人物を「この子とこの子が友だちになったら?」と組み合わせると、思いがけない展開が楽しめます
・きょうだいの絵を混ぜてみる:きょうだいがいるなら、それぞれの絵を1枚ずつ出し合って、ひとつのお話にしてみるのも楽しい遊び方です
並べる場所は、床の上やテーブルの上で十分です。冷蔵庫に貼ってある絵をそのまま使っても構いません。片付けまで含めて10分くらいの、気軽な遊びとして取り入れてみてください。
生まれたお話を、絵と一緒に残すアイデア
即興で生まれたお話は、その場かぎりで消えてしまいがちです。けれど、あとから読み返すと「この頃はこんなことを考えていたんだ」と、絵だけでは分からない子どもの姿が見えてきます。無理のない範囲で、少しだけ書き留めておくのはいかがでしょうか。
・絵の裏や付箋にひとことメモ:キャラクターの名前と、お話の一文だけでも十分です。日付と年齢を添えておくと、見返したときの手がかりになります
・スマホの音声メモで録音する:書くのが大変なときは、子どもが話している声をそのまま録音しておく方法もあります。その時期ならではの言い回しや声も、一緒に残せます
・写真に撮って「手作り絵本」にまとめる:お話の順に並べた絵を撮影し、ノートやアルバムに貼って、下にお話を書き添えれば、世界に一冊の絵本になります
わたしたちが作っている「コノミュー」は、子どもの作品を写真で残して見返せるアプリです。描いた絵をキャラクターにしたり、何枚かの絵を絵本のようにまとめたりもできるので、親子で考えたお話を、絵と一緒に残しておく場所のひとつとして使っていただけたらうれしいです。
お話をつくる時間そのものが、親子の宝物に
忙しい毎日の中で、子どもの絵にじっくり付き合う余裕がない日もあると思います。そんな日は、「上手だね」のひとことだけでも、もちろん大丈夫です。
それでも、ふと時間ができた夜に「この子はだれ?」と聞いてみると、子どもがうれしそうに話し始める姿に出会えるかもしれません。お話の出来ばえよりも、絵を囲んで一緒に笑ったり、想像をふくらませたりする時間そのものが、きっとあとから思い出す大切なひとときになります。
今日描いてくれた絵から、どんなおはなしが生まれるでしょうか。肩の力を抜いて、子どもの世界を少しだけのぞかせてもらってくださいね。
