「うまく描けないもん」。さっきまで楽しそうにクレヨンを動かしていたのに、急に手が止まって、紙をくしゃっと丸めてしまう。描きかけの絵を「見ないで!」と隠してしまう。そんなわが子の姿に、どう声をかけたらいいのか戸惑った経験はありませんか。
子どもが自分の絵に自信をなくす瞬間は、実は成長の途中で多くの子に訪れます。今回は、「うまく描けない」と落ち込む子どもへの寄り添い方と、そんな時期だからこそ大切にしたい「残し方」についてのお話です。
「うまく描けない」は、目が育ってきた証拠
不思議に思いませんか。2〜3歳の頃は、なぐりがきでも「みてー!」と得意げだったのに、4歳、5歳と大きくなるにつれて、「うまく描けない」と言うようになる。実はこれ、後退ではなく成長のサインだと言われています。
年齢が上がると、子どもは「本物はこう見える」「お友だちはこう描いている」と、見る力が先に育ちます。ところが手の技術はまだ追いつかない。頭の中の理想と、紙の上の現実。そのギャップに気づけるようになったからこそ、「うまく描けない」という言葉が出てくるのです。つまりあの悔しそうな顔は、子どもの中で観察する目がぐんと育っている証拠でもあります。
「上手だね」より、届く言葉
自信をなくしている子に「上手だよ!」と励ましても、「上手じゃないもん」と余計に頑なになってしまうことがあります。子ども自身が「理想と違う」と感じているとき、結果をほめる言葉は、なかなか心に届きません。
そんなときに届きやすいのは、結果ではなく過程や事実に触れる言葉だと言われています。「この青、きれいな色だね」「ここ、ぐるぐるして楽しそう」「最後まで描いたんだね」。上手か下手かのものさしから降りて、見たままを言葉にする。評価ではなく、「ちゃんと見ているよ」が伝わることが、子どもの安心につながります。
また、「どこが嫌だったの?」と聞いてみると、「お鼻がへんになった」と教えてくれることもあります。理想があるのは素敵なことだと受け止めたうえで、「おかあさんはこの絵、好きだなあ」と一人の鑑賞者として伝える。直そうとしなくていい、そのままで見てくれる人がいる。その実感が、また描いてみようという気持ちの土台になります。
くしゃっと丸めた絵も、捨てないでおく理由
自信をなくした時期の絵は、本人が「見せたくない」と言うこともあって、つい処分してしまいがちです。でも、もし可能なら、丸められた絵や描きかけの絵も、そっと写真に残しておくことをおすすめします。
なぜなら、少し時間がたってから見返すと、その絵が「悩んでいた時期」の記録として、かけがえのないものになるからです。半年後、一年後、「あんなに描けないって泣いてたのに、こんなに描けるようになったね」と、過去の絵と今の絵を並べて見せてあげられたら。それは、どんな励ましの言葉よりも説得力のある「きみは成長しているよ」の証拠になります。
描けなくて悔しかった日の絵も、のびのび描けた日の絵も、どちらもその子の歩みの一部。上手な絵だけを選んで残すのではなく、時間の流れごと残しておくと、作品はあとから「成長の物語」として読み返せるものになります。
並べて見返せる場所があると、励ましはもっと伝わる
わたしたちが作っている「コノミュー」は、子どもの作品を写真に撮って、スマホの中に小さな美術館のように残していけるアプリです。作品が時系列に並ぶので、「前はこうだったのに、こんなに変わったね」を、子どもと一緒に画面をめくりながら振り返ることができます。
自信をなくしている子にとって、過去の自分から今の自分への変化を目で見て確かめられることは、大きな支えになります。もちろん、アルバムやスマホの写真フォルダでも構いません。大切なのは、その子の歩みを並べて見返せる場所を、一つ持っておくことです。
「うまく描けない」と涙をこぼす日は、親としては少し切ないけれど、それは子どもの目と心が育っている途中経過。丸められた一枚も、そっと写真に残しておけば、いつかきっと「がんばってたね」と一緒に笑って見返せる日が来ます。今日の一枚を、未来の励ましに。そんな残し方も、あるのだと思います。
